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メタっ娘

chapter 6-1 懐かしい場所

「ティアラ!」

 芽以子は叫んで、めいっぱいに腕を突き出す。

 そのとたん、何かから転げ落ちた。

 ガタン──!と盛大な音を立てて芽以子は木の床に頬をつける。

「……な?」

 急いで起き上がると、そこにはあまりに見慣れた光景が広がっていた。

 飛び込んできたのはまず、四〇人もいる女子、その奇異の視線。前方には背広姿の恰幅がいい男性。こちらを睨んでいた。

 全員がブレザーにリボンタイ。芽以子自身もブレザーを着て、チェックのミニスカートをはいている。黒板、教壇、机に椅子。

 教室だ。

 芽以子は目を見開いて硬直する。

「葛木。寝ぼけるのも大概にしろ」

 背広姿の男性──古典教師はむっつりとそういってくる。教室内からクスクスと笑い声が漏れた。

「何を突っ立ってるんだ。いいから座りなさい!」

 体が動かなかった。芽以子は教師の言葉を無視して棒立ちになる。

「ちょっと芽以子ッ」 

 右袖を引っ張られる。

「何やってるのよ、座りなさいって」

 そちらを見た。袖を引っ張るその女子を、芽以子は彼女のことを知っている。

 だが、まるで遙か昔の友人のように感じられた。

 芽以子と目を合わせたその女子は、思わず言葉を詰まらせる。

「ど、どうしたの芽以子!?」

「……え?」

「どうして泣いてるの……!?」

 いわれて頬に触れる。一筋の涙がこぼれていた。

 学舎の、あまりに懐かしい匂いに反応して。

 教室内がざわめく。芽以子の尋常でないその様子に教師も困惑していた。

「……ごめん」

 芽以子が独り言のように言葉をこぼす。

「……ちょっと……気分悪い……」

 芽以子が膝を折った。教室内は騒然となる。

「せ、先生! 保健室に連れて行きます!」

 教師は狼狽(ろうばい)しながら何度もうなずく。

 意識が朦朧(もうろう)としていた。まるで教室がぐるぐる回っているかのようだった。とても堪えきれなかった。

 そしてそのまま、芽以子は意識を失った。